今回は、自閉症と生きるオーウェンサスキンドの物語、映画『ぼくと魔法の言葉たち』(アメリカ、2016年)。
自閉症の息子オーウェン・サスキンドをもつ父ロン・サスキンドによる原作『ディズニー・セラピー自閉症のわが子が教えてくれたこと』を映像化したものです。
ドキュメンタリーで、オーウェンがいかに成長してきたかが描かれています。
人生を見直すきっかけになるような、ドキュメンタリー映画がみたいなぁ
なら、『ぼくと魔法の言葉たち』はどうかしら?
自閉症と共に成長していく姿を見て、勇気をもらえるし、自分自身の生き方についても見つめなおすことができるいいきっかけにもなると思うよ~
自閉症という障害がある方が主人公なのね・・・
主人公の生き方が私たちの生き方に影響を与えうるということ?
そうそう!
苦しい状況をどう打破していったのかをアニメーションと共に描いてくれているんだよね。
語りや生活の様子やアニメーションといろいろな形で映像化されているからとても分かりやすくてためになる!
そうなんだぁ。
もう少しくわしくみどころなんかも教えてほしいなぁ。
まだ観てない人にも読んでもらいたく、私なりの視点になりますが、つづってみたいと思います。
映画『ぼくと魔法の言葉たち』の作品情報
あらすじ
オーウェンの幼少期、家族団らんの様子が映し出されるところから本作品は始まります。
オーウェンに自閉症の診断が下ったのは、彼が3歳の時でした。
彼は、言葉を発することはままならず、沈黙し続けました。
両親は、希望を見いだせず絶望の淵にたたされます。
しかし、ある時、『声をよこせ』という意味の言葉を発したのです。医者によれば、アニメで聞こえた言葉をエコーで返すだけのことであるし・・・普通は意味を理解してはいないというでした。
両親は少しの希望の光が見えたようで、興奮状態でした。
その一件以来、また沈黙状態になりました・・・4年経っても、一向にしゃべる気配がなくただむなしく時が過ぎていきました。
でも、ついに光が差し込む日がやってきたのです。
オーウェンは、ディズニー映画のセリフを全て暗記し、そこから現実の世界を理解しようとしていました。
初めてアニメのキャラクターに徹しながらもオーウェンと会話した当時のことを父は、身振り手振りを駆使しながら教えてくれました。
本作品は、ここからオーウェンがどのように支えられ、苦しみ、悩み、成長してきたかが描かれています。
予告動画
映画『ぼくと魔法の言葉たち』のネタバレなし感想
ディズニーの世界から現実の世界へ羽ばたいていくストーリー展開が美しい!
自閉症の症状として、予想外の展開に対応することが苦手であるということがよくあげられます。
だから、前もった準備をしておきましょうと・・・安心して対応できますようにと。
でも、現実の世界では予想外の展開ばかりです。
おそらくオーウェンも発症した3歳の頃から予想外の展開にパニックになる症状はあったのでしょう。・・・言葉を発せられなくなったのも思考してその場に応じて臨機応変に対処することが難しかったからでしょうね。
でも、オーウェンは幸運でした。
大好きなディズニー映画に出会い、台本となる言葉を手に入れることが出来たのですから・・・
タイトルの『・・・魔法の言葉たち』とは、オーウェンが前もって準備できる(暗記することができる)素晴らしい言葉という意味合いもあるのではないかなと思いました。
言葉だけでなく、ディズニーの中のストーリーがどれほど彼と彼の家族を勇気づけたかは想像に難くありません。そして、これからも・・・
ディズニー映画で聞こえた言葉が単なる音だったあの頃・・・
ディズニー映画で発せられた言葉の意味が理解できたあの頃・・・
ディズニー映画で発せられた言葉の意味の共有を家族とできたあの頃・・・
オーウェンの成長過程が目に浮かんできます。
そんな素晴らしいディズニー映画の中にいたオーウェンが、時の流れと共に、現実の社会と向き合って前を向いていかなければならない時が来ました。
台本のあったディズニー映画の世界から台本のない現実の世界へと進んでいかなければいけないのです。
ディズニー映画から得た教訓(台本)を胸にオーウェンは現実の社会に踏み出していきました。
成長と共に、オーウェンの想像力・予想外の展開にも動じない対応力の向上も見てとれました。
働いて、一人暮らしをして、彼女が出来て・・・現実の世界で起こる難題に懸命に立ち向かっている彼の姿をみて感慨深いものがありました。
ラストの彼のスピーチは、彼の苦手としていた想像力からたった一人で生み出した言葉であり、まだまだ道の途中ではあるものの、今までの彼の人生の集大成のような気がして胸に迫るものがありました。
スピーチに感動したのはもちろん、台本なしの彼の人生の幕開け、現実の世界へ羽ばたいていく彼にエールを送る意味でのラストのスタンディングオベーションだったのではないでしょうか。
ディズニーの世界から現実の世界へ、創造された世界から創造する世界へと羽ばたくストーリー展開・・・ものすごく美しい脚本構成だなぁと感じています。
一本のストーリーの木を彩る演出!
演出の工夫も本作品のみどころの一つでしょう。
昔と今の時間軸で・・・家族団らんする幼少期のオーウェンと家族団らんする大人になったオーウェンとが映し出され対比されていました。
人生の意味をオーウェンに教えてくれるディズニー映画と人生の意味をオーウェンが考えてできた創作アニメーションで・・・オーウェンにとってのディズニー映画が、偉大であり、人生のステップを踏み出す原動力になっていることを教えてくれていました。
家族だけでなく周りのサポーターや同じ自閉症仲間や声優さんとの日常生活の中でのふれあいも多々取り上げられていました。
あと、オーウェンの幼少期の状況についての両親の語りも・・・
ドキュメンタリーとディズニーのコラボはとっても贅沢!
このような縦横無尽な演出が前述した一本の美しいストーリーを彩っているかのようでした。
ドキュメンタリーだからこそできる手法であって、面白いなぁと思いました。
映画『ぼくと魔法の言葉たち』の考察~生きていくために必要なもの
オーウェンにとって生きていくために必要なものを整理しつつ、私たちにとっての必要なものにも言及していきたいと思います。
①人生の台本・バイブル~ディズニー映画の存在
オーウェンはディズニー映画を通して、現実の世界を理解しようとしていました。
キャラクターのオーバーリアクションにより気持ちを理解しやすかったようです。
友達が欲しいときには『ジャングルブック』を、あきらめない気持ちを知りたいときは『ヘラクレス』を・・・
オーウェンが現実の世界で生きていくためのお守りのようなもの・・・彼にとってはディズニー映画は命と同じくらい大切な存在ですね。
私たち人生の台本・バイブルはなんでしょうか?
『恋愛バイブル』やら『受験バイブル』やらよく言われますが、総じてバイブルといえば・・・やはり映画ではないでしょうか。
言葉とともに映像も映し出されるので、心の奥にまで浸透してきます。
私にとっては、なくてはならないものです。
②家族~父、母、兄の存在
オーウェンをどんな時でも包んでくれる温かい家族。
父、母、兄それぞれのオーウェンを大切に想う気持ちが画面越しからも伝わってきました。
特に印象的だったのは、兄ウォルトの言葉。
「いつか自分が弟の面倒をみる時がくる。・・・誕生日になるたびに、そのことを考えてつらくなる。いつもは考えないようにしている」旨の発言をしていました。
弟は自分が守るという責任感からくる言葉で、弟のことを大切で、何よりも近しい存在だからこそ出てくる本音なんだろうと思いました。
あと、兄は「ディズニー映画はハッピーエンドで終わり。その後のことなんか描かれていない」旨も発言していました。
ディープキスやセックスについて踏み込んだ質問を弟にしているところが、微笑ましかったです。
心配は尽きないでしょうけれど、これだけ弟想いの兄がいれば心強いですね。
私たちにとっての家族とは?
人は自由になりたいなりたいというけれど、完全に自由になってしまうことは寂しい。
完全な自由=孤独=家族がいない・・・ということになってしまうから。
私は、この先完全に自由になってしまったとき、家族の存在の大きさに気づくのでしょうか。
日々の暮らしの中で、離れていても絶えず家族の存在を感じていたいと思います。
③恋愛~エミリーの存在
同じ自閉症のエミリーとの出会いによって、オーウェンは大きく成長しました。
メールとのやりとりで、一方通行な想いだけを送るのではなく相手に考えさせることも必要であることを学んでいました。
エミリーとの関係性において、予想だにしていない状況になってしまった時も、状況を切り開いていくたくましいオーウェンの姿がありました。
私たちにとっての恋愛とは?
人生においてのエクスタシーとでもいえるでしょうか・・・これ以上、いつまでたっても色あせないことって他にあるのかなぁって思います。
人は今を生きなきゃだめって言われるけれど、恋愛をしているときが一番今を生きているような気がします。
いくつになっても恋愛はしていたいですね!
④自立~引っ越し
オーウェンは社会に出るタイミングに合わせて、一人暮らしを始めました。
ただ、自立を支援する形であって、周りのサポーターが彼を見守ってくれていました。
本当に彼は環境に恵まれているなぁ・・・
それに、大量のディズニー映画が自立してからもいつもついててくれているからきっと大丈夫ですね!
私たちにとって自立とは?
私の思う自立は、自分のことが自分で決めれることです。
すなわち、経済的にも精神的にも大人にならないといけないということです。
誰かと一緒にいてもいなくても、自分だけで立てるようにしたいものです。
⑤逆境~自閉症
オーウェンは、自閉症という障害に苦しみ、悩まされて、今まで生きてきました。
これからも自閉症と共に生きていかなければなりません。
障害という逆境は、彼に試練を与えながらも、彼を大きく成長させてくれました。
人生においての逆境とは何か?
ものごとが上手くいかない境遇のことと一般的に言われていますよね。
・・・人生路頭に迷っている状況・・・
私の場合だと、ずっと路頭に迷っているので、生きている間に挽回できればといいと長い目で見ています。
逆境って、なかなか拭い切ることは難しいので、逆境の中で徐々に人生を良くしていく方向でいいかなぁと思っています。
逆境があった方がきっと人生振り返った時、感動的ですよね。
まとめ
本作品を通して、生きる勇気や希望をもらうことができると思います。
自閉症の理解を深めることはもちろんですが、それ以上に逆境に打ち勝つ術を教えてもらえる誰にとっても意味のある作品になっています。
オーウェンの場合は、ディズニー映画を活用することで生きていく糸口を見つけていきましたが、私たちも人生において応用していきたいですね。
映像の雰囲気もいいので、ぜひぜひご賞味あれ。
以上