今回は、イギリス・アメリカの合作映画『ヴィクトリア女王~最期の秘密』(2017年英、2019年日本公開)。
ヴィクトリア女王にはジュディ・デンチ(英・女優)、彼女の従僕アブドゥル・カリムにはアリ・ファザル(印・男優)が務めた。
歴史上の人物や出来事をテーマにした作品にも触れたいなぁ
なら、『ヴィクトリア女王~最期の秘密』はどうかな?
女王と従僕との交流録が描かれている作品なんだけど、歴史の知識がほとんどない私でも
入っていける作品でよかったと思うよ~
女王が一人の従僕青年に入れ込んでいくという内容が自分の中で受け入れやすかったんだと思う。
ヴィクトリア女王は、イギリスの女王で、初代インド女帝だよね。
イギリスで最も輝かしい時代を築いた人であり、王室のモデルにもされている人だね~
その彼女が一人の青年に入れ込んでいるって、めちゃくちゃ禁断な感じだね・・・だからこそ、作品として面白いんだろうけど・・・どんなふうに描かれているのか観てみたいなぁ
みどころなんかも教えてほしいなぁ
まだ観てない人にも読んでもらいたく、私なりの視点になりますが、つづってみたいと思います。
映画『ヴィクトリア女王~最期の秘密』の作品情報
あらすじ
1887年、イギリス・ヴィクトリア女王(ジュディ・デンチ)の在位50周年式典。
イギリス領のインドから女王へ記念硬貨を捧げ差し出す要員にアブドゥル・カリム(アリ・ファザル)とモハメドが選ばれ、彼ら二人はイギリスの式典に向かった。
宮殿での式典の終盤、女王と目を絶対合わせてはならないこととされていたにもかかわらず、アブドゥルは女王の足に口づけ、さらに目を合わせニコリとし、女王に強い印象を残した。
因習的な王室に嫌気がさし、信頼を寄せていた夫をはじめとする男どもを失い、孤独の中にいた女王。
そんな時に突如として現れたアブドゥルを女王は非常に気に入り、可愛がるようになり、『ムンシ』(師のこと)と呼ぶようになった。
彼への厚遇ぶりに周囲から反感を買うも、女王はお構いなし。
やがてアブドゥルに妻がいたことを女王は知り、女王は激怒することに・・・
予告動画
映画『ヴィクトリア女王~最期の秘密』のネタバレなし感想
女王役ジュディ・デンチの風格ある演技に魅了!
本作品の見どころの一つは、ジュディ・デンチの観る者を惹きつける演技なのではないでしょうか。
在位50周年式典で、ふてくされてつまらなそうな表情をし、料理をむさぼる姿・・・側近に寄ってたかってベッドから起こされ生きる気力なんてないという佇まい・・・王室に似つかわしくない彼女のシルエットがこれからどのような展開になるのか、観るものの想像をかきたてます。
それが、アブドゥルと出会ってからの彼女は見違えるほどでした。彼女の表情や佇まい、雰囲気があからさまに変わります。
人って面白いですよね・・・好きな人がいたり、興味の湧くことに出会えたりすると分かるってこのことをいうんですね。
女王である彼女のお茶目で可愛らしいこと・・・とっても微笑ましくなりました。
アブドゥルへの寵愛ぶりに周りは呆れていても、それをものとみせず堂々と振る舞うさまがなぜか滑稽にみえて、笑えました。
ジュディ・デンチの魅せる演技に引き込まれっぱなしでした。
きらびやかな王室の雰囲気を堪能できる!
非日常の世界である王室の日常を垣間見れるワクワク感ありますね。
ストーリーなしにでも楽しめる異空間・・・優美な衣装、格式高い王室を物語る装飾品、厳かな式典など、そのすべてがリアリティーがありました。
式典のシーンは、リハーサルから丁寧に描かれていました。
女王様のために、あれだけの人が携わり、念入りに式典の段取りを確認するとは・・・光景を見て改めて格式を誇る皇室の存在を感じることができました。
緊張感が漂い誰もが女王様に失礼なことがないようにと細心の注意を払う。
そんな中で居眠りをしたり退屈そうな女王様・・・そこに女王様と目を合わせニコリとするアブドゥル。
式典の雰囲気に不釣り合いな二人を浮かび上がらせる演出に緊張感がほぐれましたね。
女王vs皇太子やお付きの人達の構図がよく描かれている!
女王様とインド人のアブドゥルの親密になる関係性を中心に描きながらも、その関係をけむたがる周りの人達の心情もよく描かれていたと思います。
特に、母親の愛に飢えている皇太子のバーティ(エディ・イザード)は、自分の母親の前代未聞のふるまいに気恥ずかしいやら腹が立つやらでいても立ってもいられない気持ちであったことは想像にかたくないないです。
人種や宗教の垣根を超えた二人の関係を理解できずにいる周りの人達の気持ちやその気持ちからでたふるまいに共感することもできました。
皇室財産さらにはイギリスがインドに乗っ取られることをも危惧したのでしょう・・・人種とか宗教とか関係なしに得体のしれない者を受け入れることってなかなかできないことだと思います。
その一方で、女王様のアブドゥルに対する想いも理解できました。
孤独からの救世主・・・自分のことを崇拝してくれ、インド文化や言語まで教えてくれ、心まで癒やしてくれる存在ですからね。
両者に肩入れすることなく観ることができるのも、必然的に生まれた女王vs皇太子やお付きの人達の構図の中で、それぞれの心情面を丁寧に描いていたからではないかと思います。
ヴィクトリア女王とアブドゥルの関係で思うこと
ヴィクトリア女王とアブドゥルの関係の秘話は、カレーの歴史の調査にあたっていたインド人女性でジャーナリストであるシュラバニ・バスの偶然の発見によるらしいです。
即位した皇太子が生前の母とアブドゥルが交わした書簡のほとんどを処分してしまっていたが、女王がウルドゥー語で書いたものだけが文書館に残されていたそうです。それと、アブドゥル側が保存していた日記との照合で、二人の秘話が浮かびあがってきたというわけです。
本作品は、女王のアブドゥルに対する想いは十分伝わってきましたが、アブドゥルがどのような理由から女王を崇拝し、あれほどまでに寄り添ったのかが描かれていませんでした。
アブドゥルの正直な想いが日記には書かれていたのでしょうか・・・必然性のなかった関係性なので、私的には気になりました。
まとめ
歴史ものの映画って、その時代や国の背景が分かっていないと…と思い、敬遠していたのですが、本作品はそんなことも気にせず楽しんで観られる作品でした。
これを機会に、イギリス王朝とその支配下におけるインドの関係にも興味がもててよかったです。
遠い昔の歴史上の人物を知ることは有意味だし、今の時代の価値観や生き方の参考になるなぁと改めて感じることができました。
ぜひぜひ、本作品をご賞味あれ。
以上