今回は、蒼井優、竹内結子、松原智恵子、山崎努がメインキャストの『長いお別れ』(2019年公開)。
直木賞作家である中島京子自身の認知症の父親を見送った経験を基に作られた小説を映画化したもの。
家族の絆をテーマにしているような作品を観てみたいなぁ。
それなら、『長いお別れ』はどうだろう?
家族って尊いものだなぁとつくづく感じられる作品だと思うよ~
タイトルの意味も気になるところだわ・・・
なんとなく分かる気もするけど、あっているのか!?
そうだね~私も、観るまでよくわからなかったよ。
観終わって、じっくり感じとればいいのではないかな。
きっとシリアスな内容なんだろうけど、そこをどんな風に描いているのか観るのが楽しみ!
見どころなんかも教えてほしいなぁ
まだ観てない人にも読んでもらいたく、私なりの視点になりますが、つづってみたいと思います。
映画『長いお別れ』の作品情報
あらすじ
父・昇平(山崎努)の70歳の誕生日を家族で祝う。
久しぶりに帰省した娘二人、長女・麻里(竹内結子)と次女・芙美(蒼井優)は、母から父が認知症になったことを知らされる。
人生思うようにいかず悩んでいた矢先の突然の報告に二人はとまどいを隠せない。
それからというもの、家族は連絡を取り合い、支え合い、父親との愛を感じ取りながら、前をみて進んでいく。
7年という長い年月をかけて徐々に記憶を失っていく父親との過去、現在・・・そして未来とは・・・
予告動画
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映画『長いお別れ』のネタバレなし感想
お芝居ということを感じさせないリアリティーのある山崎努さんの演技!
本作品の一番のみどころは、なんといっても老いとともに進行していった認知症を体現された山崎努さんの演技ではないでしょうか。
7年という年月の中で、認知症の進行がゆっくりなのに合わせて、心の機微や表情も少しずつ変化させていっていらっしゃるところがよく分かりました。
認知症の症状が出始め、トンチンカンな言動をする中、難しい漢字を書けたりすると山崎さんが急に恰幅のいい威厳ある方に見えてくるから不思議です。昔の若かりし姿、学校長をやっておられた姿が目に浮かぶようで、心がほっこりしました。
言葉を発することができなくなった状態で、ベッドに横たわっているシーン。松原さん演じる妻に、絶妙な表情でかすかに微笑みかけるところは特に夫婦愛が感じられ目頭が熱くなりました。
最後の方は、無味乾燥な世界を傍観しているかのような表情、佇まいであって人の残酷な現実を思い知らされた気がしました。
蒼井優さんをはじめとする家族の表情も魅力的でした。
夫をそばで支える妻松原さんのチャーミングさ、際立っていました。変わりゆく夫をいつも可愛く笑って支える姿は憧れです。
温かい空気感が漂っていた家族、皆さんの雰囲気、演技だからこそつくりあげられたんだと思いました。
素敵でした。
理想の家族のカタチを教えてくれる!
認知症のお父さん・昇平(山崎努)がずっと家族の中心にいるカタチ・・・なかなかできそうでできないと思います。
お父さんにかかりきりだから家族の中心というのではなく、お父さんにみんなが愛を持って接しているんですよね。そういう意味で、家族の中心にいるなぁと。本作品の家族は、理想型だなぁと思います。
認知症は、トンチンカンなことを言ったりして記憶がうすれ、徐々に意思疎通が図れなくなり、介助が必要になり、嚥下障害などさまざまな障害も生じたりします。
世話をする家族は、煩わしく思ったり、疲れてしまったりして距離を置いてみたくなるものです。
もちろん本作品でも、自分たちの生活がある中で、何かとお父さんのことで呼び出されて困惑している娘たちの姿、親の下の世話をする大変さも少しですが描かれていました。
でも、この作品は、苦労の中でも、家族みんなが絶えずお父さんのことを気にかけ、時には相談を持ちかけ、支えて前を見ている姿が描かれています。
希望の光がたとえ見えなくても、今あるお父さんの存在、今あるお父さんの記憶を大切にしようという温かいものが感じとれます。
入院していてほとんど言葉も交わすことなく、表情のないお父さんに向かって娘らが涙ながらに心配事を打ち明ける場面は印象的でした。昔みたいに的を射た返答があるわけでもなく、笑顔で微笑んでくれるわけでもない。それでも父親へ寄せる信頼・・・家族、親、人間の尊さを感じずにはいられませんでした。
妻と
娘たちと
孫と
家族たちの交流を大切に描いているこの作品を通して、自分の家族に対する接し方だったりを見直すいいきっかけになるのではと思います。
『家族』を忘れたくないという想いが込められている!
本作品で頻繁に登場した言葉。
「家に帰る!」
家ににいるにも関わらず、お父さんはこの言葉を発していました。
認知症は、直前の記憶から消えていき、昔の記憶は進行が進んでも残っていたりするとよく聞きます。
お父さんも、きっと記憶に残る昔の家族を求めて、「家に帰る!」発言をしたのではないでしょうか。
昔家族を迎えに行った遊園地に、当時と同じように傘をもって、出かけていたシーンはそのことを物語っていました。メリーゴーランドに笑顔で乗っているお父さんは、その瞬間、家に帰れたんだと思います。
『家族』をつなげる小道具たち!
『家族』を感じられる工夫がなされているのも、本作品のみどころです。
まず、だし巻き卵料理。母曜子、長女麻里、次女芙美が、各々の暮らしの中で別々の場所で作っています。
母曜子のおふくろの味を引き継いだ娘たち。
たとえ離れていても、繋がっている家族の絆を感じられます。
次に、ポテトサラダ。お父さんの誕生日会での食卓に並んでいましたし、家で介護する次女がお父さんに食べさせていました・・ラストにも届いたじゃがいもでポテトサラダを作ろうと次女が笑みをこぼしていました。
ポテトサラダが好きで元気だった頃のお父さんをいつでも思い出せるように、昔の家族を思い出し昔のお父さんに戻ってほしい思いも込められているのだと思います。
他にも、ボンタンアメや鮭など・・・
ひとつひとつの小道具に思いが詰まっているであろう演出・・・感慨深いですね。
映画『長いお別れ』の考察
タイトル『長いお別れ』に込められた思いとは?
『長いお別れ』とは、少しずつ記憶をなくし、ゆっくりと遠ざかっていくことだと劇中にでてきました。
記憶のお別れなんですね。
誰にとっての?・・・・認知症になったご本人にとってのが一番しっくりはきますね。
『長い』というとお別れがずっと・・・となり悲しい心持ちにさせるのですが、裏を解せば、記憶とお別れするには十分な時間があると前向きに捉えることもできると思います。
認知症を患っている本人にとって、薄れ遠ざかる中で、ふとした時に鮮明に蘇ってくる思い出は格別なものがあるのかもしれません。
私の祖母も昨年98歳で他界しましたが、やはり重度ではないものの認知症でした。
亡くなるまでの約一年病院にいた中での彼女の楽しみは、私たち家族に自らの少女時代を語ることでした。
思い返すというよりも、当時の情景が次から次へと色鮮やかに蘇ってくるんだと言っていた覚えがあります。
いつになく満面の笑みで、饒舌に話す祖母の姿が今でも忘れられません。
本作品の父さんも、7年という月日の中で、過去の輝かしい思い出にふけっていたのでしょう・・・時折見せる笑顔がありました。
認知症の進行は、波のようで調子のいい日もあれば悪い日もあります。
その波打つ波動だからこそ、周りにいる家族は穏やかに現実を受け止めることができるんじゃないかなぁと思います。
『家族』と向き合える時間がたっぷりあるという意味もタイトルに込められているかと思えば、ポカポカした気持ちになれますね。
本作品と現実とのギャップとは?
老夫婦とその娘たちがいて、長女は嫁いでカリフォルニアにいて息子もいて・・・と現実社会のどこかにありそうな家族を本作品は描いています。
だから、本作品を現実社会を前向きに生きるための心の拠り所とすることは、できるかもしれません。
でも、現実に起こっている介護等の問題に関しては実話ベースにされているとはいえ、上辺だけの感じで、踏み込んで描かれてはいないなと感じました。
認知症の家族を長年支えていくというのは、色々な意味で苦労します。兄弟同士で、いさかいもあるかもしれません。
老老介護になって誰かが一緒に暮らさないと・・・誰が一緒に暮らすのか・・・家にいるときに何かあったらどうしよう・・・どこの施設にいれるのか・・・施設に入れた入れたらで、介護される方の対応不足で骨折しないか、邪険な扱いをされて気落ちしていないか不安で仕方ない・・・
あげたらきりがありません。
こういう現実と本作品とは、両立することができないのかもしれません。
現実を描くと心温まる家族のストーリーは描けないのかもしれません。
本作品は心温まる家族を描くには十分すぎるストーリー展開とキャストであったわけですが・・・
あくまでも理想の家族のカタチであって、現実社会にどっぷりつかった家族ではないといえるのではと思います。
映画『長いお別れ』~関連映画を紹介します!
映画『湯を沸かすほどの熱い愛』もオススメ!
本作品『長いお別れ』は中野量太監督・脚本作品です。
生・死・家族・愛という人間が避けて通ることのできない永遠のテーマを描いていますね。
他にも関連オススメ作品があります。
中野量太監督・脚本作品で観ておきたい作品といえば・・・
ズバリ、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』です。
こちらも生・死・家族・愛同じテーマを扱っています。
本作『長いお別れ』と同様に、悲しいけど前向きになれる作品になっています。
ぜひ、まだの方は観てみてくださいね。
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まとめ
本作品は、認知症というシリアスな内容を扱っています。
けれど、クスッと笑えるシーンから心が温まるシーンまで、どこをとっても見応えのあるものになっていると思います。
ぜひ、ご家族と、大切な方と一緒にご覧になって観て下さい。
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