今回は、実話に基づいた作品『トゥー・リブ・アゲイン』(米1998年)。
社会派ドラマで、ボニー・べデリア(元ソーシャルワーカーアイリス)とアナベス・ギッシュ(監禁されていた女性カレン)が主演を務めた。
実際の事件をベースに作られている作品って興味があるなぁ
じゃあ、監禁されていた女性の更生物語、『トゥー・リブ・アゲイン』はどうかな?
約90分の割と短いストーリーなんだけど、上手に凝縮されていて素晴らしい作品だと思ったよ。
日本でも監禁事件って聞いたことあるし、社会問題でもあるよね~
一度はこういった作品も観て、考えておきたいと思っていたところだよ。
本作品は、監禁そのものを扱っているというよりも、監禁されていた女性がどのようにして立ち直っていったのかについて重きが置かれているよ。
だから、前向きで勇気をもらえる要素も多分に含んだ作品になっているよ~
人との関わりを通して変わっていくんだろうな・・・
見どころなんかも教えてほしいなぁ
まだ観てない人にも読んでもらいたく、私なりの視点になりますが、つづってみたいと思います。
映画『トゥー・リブ・アゲイン』の作品情報
あらすじ
2年前に娘を事故で亡くしたアイリス(ボニー・べデリア)は、元ソーシャルワーカー。
自然や動物たちに囲まれてのんびりと暮らしていた。
そこへ、元同僚であるハンクが彼女にある案件を手伝ってくれるよう持ち掛けてきた。
その案件とは、16年間母親により自宅の部屋に監禁されている女性カレンの件であった。
カレンの母親は「カレンは病気であり自分が面倒を見ている」と言い張り、部屋に入ることを拒絶したが、アイリスは強行突破した。
そこで見たカレンの様子や光景にアイリスは愕然とした。
そこから、カレンを更生させるべく、アイリスの奮闘が始まる。
映画『トゥー・リブ・アゲイン』の感想
短い尺の中に監禁されていたカレンの成長物語が凝縮されている!
16年間もの間監禁されていた女性の暗闇から希望までの変遷が90分という短い時間で上手くまとまっているなぁという印象です。
実際を忠実に描いていたとしても、やはり実際に起こったことの惨さを考えたら画面だけでは描ききれない部分は多々あると思います。
それでも、ラストのカレンが自立が可能かの審理を行うシーンでのカレンの言葉や表情から安堵の気持ちや胸にこみあげてくる感動があったのは、カレンの成長を感じ取ることができるストーリー展開があったからではないでしょうか。
ただ、カレンがなぜ監禁されるに至ったのかについては、アイリスも証言していたように明らかにされていないようです。この部分については、知りたかったなぁ・・・・と。
カレンの母親はカレンのことを病気だと一言で片づけてしまっていましたが、親娘の間に何があったのか、どういう経緯で監禁が始まったのかについても、社会問題や人の心理などが絡んでいる見逃してはならない点だと思うので、作品に反映させて欲しかったところです。
回復していく様を茶目っ気たっぷりに描いている!
全体的な印象として、カレンの回復過程の中でのアイリスの苦労は尺の都合もあると思いますが、あまり描かれてはいませんでした。
観ていて、アイリスがカレンの面倒をみるようになってからは比較的スムーズにすすんでいく感じではありました。
これも、アイリスが元ソーシャルワーカーであり、カレンの人生を取り戻すという自信からくる落ち着き感からくるのかもしれません。
私的には、アイリスの苦労よりもカレンの回復していく様を面白く演出しているところに目がいきました。
例えば、カレンが皿に料理を盛り付けてアイリスらに配膳するシーン。
料理が盛られているにもかかわらず皿を上に重ねて運んでくるカレンの姿が微笑ましかったです。
16年間という時間の中で失ったものを取り戻していく愛おしい時間をこんな形で演出するとは・・・と考えもつかなかったです。
監禁された女性を演じたアナベス・ギッシュの陰から陽への見事なチェンジに拍手!
16年間の監禁、恐怖でしかなかったと思います。
おぞましい出来事のストレスを誰にも発散させないで閉じていたわけですから、監禁から解放された後も激しく取り乱すであろうことは、容易に想像できますね。
で、ストレスやら恐怖やらを爆発させるシーンです。
自分の顔を鏡で見るシーン・・・狂気に満ちた激しさを体全体で演じられていて、ものすごく可哀そうに・・・・と心が痛みました。
それから徐々に落ち着いてきて・・・
アイリスと夜景を見ながら、心を通わすシーン・・・そして、ラストのシーン・・・
巧みなストーリー展開と相まって、成長した姿を画面越しに映し出していました。
アナベス・ギッシュのギャップの演技にやられました。
映画『トゥー・リブ・アゲイン』の考察
精神科医はなぜカレンに薬物治療をしようとしたのか?
本作品ではカレンとアイリスにスポットが当てられ、カレンの更生に携わった人たちに関して事細かには描かれてはいません。
カレンを薬漬けにし治療しようとした精神科医についても・・・
カレンはアイリスと出会えたことにより薬に頼ることなく回復に向かっていけたので本当によかったです。
ただ、アイリスが薬物漬けにしようとする精神科医に苛立ちをあらわにしているシーンは印象に残っているので、この機会にこの点について考察してみようと思います。
精神科医の役割は患者の精神の病を治すもしくは和らげることです。
多くの治療手段は薬物療法なのかもしれませんが、患者のこれまでの経緯や事情等を考慮せずになされたのであるならば、これはとても悲しいことです。
患者に寄り添った治療こそが医師にに求められるものだと思います。気持ちが沈まない伝え方をするとか・・・気遣いとかも含まれると思います。
で、本作品の精神科医は、どうしてカレンに寄り添った治療をせず、薬物治療するという判断に至ったのでしょうか。
それは、医師であることの慢心と探求心の欠如からきたのではないかと・・・
自分は医師なんだという誇りは当然あっていいと思うし、素晴らしいことなんだけど、それが周りをさげすむことであったり侮辱であったりにつながってしまう危険性もはらんでいて、それが探求することを置き去りにしてしまい、時には患者を苦しめてしまうこともあるのではないかということです。
治療という功績の裏に潜んでいる罪は意外に大きいわけで・・・
実際カレンを薬物漬けにし身動きのできない病院で治療を続けていたら、カレンの暗闇の人生から光が見えてきたか甚だ怪しいです。
医師になったら終わりではなく、広い分野に視野をもち、さらに専門分野を深堀りして研究していくことが求められると思います。
それは、慢心からくる過ちを減らすためでもあると思います。
人間力を鍛えるためでもあると思います。
本作品での精神科医は精神科であるにもかかわらず、人の心のケアについての探求を怠っていたのではないでしょうか。
精神科医以外の医師であっても、患者の心のケアをすることは治療に含まれているとは思うのですが、精神科医ですからね。
精神科医であることの威厳はもろくも崩れてしまいましたね。
アイリスの人間力の高さとを対比してみると、痛すぎます。
このような精神科医の功罪は、人間の功罪の一例にもすぎないなぁとも思い知らされました。
『実るほど頭を垂れる稲穂かな』ということわざが頭をよぎりました。
人に親身により添える人間になるためにも、常に謙虚で探求心をもって行動していこうと改めて思いました。
まとめ
本作品を通して、いい人との出会いが人をどれだけ変えてくれるかということを知ることができました。
カレンはアイリスと出会えて幸運でしたね。
幸運でしたと片付けてしまえばそれまでで、不運で人生が開けない場合も現実多くあるということも考えるいい機会になりました。
私もこれから一日一日を大切に過ごす中で、人の人生に少しでも光を与えられるような人になるように精進していきたいなぁと思った所存でございます。
本作品は、温かい気持ちになれると同時に、自分の人生を戒めるという大げさなものでなくても、心の持ちようを変えてくれるような作品です。
ぜひぜひ、ご賞味ください。
以上